猫を離せない総長さんの話Ⅰ



翠side

「おとなしくなったな?」

「………。」

もう諦めて、そういう運命だったってことにして、恐怖感だけが私を支配する。

浮かんでは消える圭人の顔。

脱力して無表情の私に気づいたのか、怪訝そうないけチャラの顔。


そんな私の様子にグッと顔を歪ませたそいつは、まだ触れてなかった私の唇に近づいてくる。

…いやだ。

…やだよ。

けーと。けーと。ねぇ。けーと。

「助けて、けーと。」

唇が触れそうになった瞬間。