猫を離せない総長さんの話Ⅰ




「けーと、朝、起きて」

トントン、と胸を叩くけど起きる様子は全くない。

途方にくれていると

「わっ…」

頭を胸板に押し付けられぎゅーーっと抱きしめられる。

「やべぇ、幸せ……」

「…え。」


圭人のきている黒いシャツが目の前に広がって、慣れ始めた香りに包まれながらつぶやかれた言葉に驚かずにはいられなくて。


鈍感ではないし、何かしら気に行ってそばに置いてくれているとは思っていたけど。


「そんな風に言われると嬉しいんだけど」

というかおきてたのね。

「今日は素直、やけに。」

「…あなたは思ったことを口に出しすぎなのよ」

「翠にだけ。」