猫を離せない総長さんの話Ⅰ




目を覚ますと、目の前には

「綺麗な顔。」

起きていると独特の雰囲気と何もかも見透かしていそうな瞳に圧倒されてしまうけれど、寝ている圭人はやっぱり高校3年生のあどけない男の子だった。


…まぁ、高校3年生の男の子なんて知らないけど。

体はしっかりと圭人の腕に拘束されたままで抜け出すこともできず、暇だったのでずっと髪を撫でていた。


今までなら他人に自分から触れるなんてあり得なかったけど、圭人には躊躇いなく触れる私。


『人の本質は曇りのない目で見るのよ、あなたに何があったとしても』

昨日祐子さんに、そっと言われた言葉。

おばさまがよく私に言っていた言葉。


わかってはいるのに、信じてしまうのが怖い。
頭ではダメだと言っているのに、心は信じてしまいたいと言っている。


最近こんなことばかり考えているな、と自嘲気味に笑う。