「ねえ、あっくん! あっくんはなんで大学にいくの?」



テーブルの上にある解きかけの算数ドリルなんてそっちのけで、そう聞いたのを覚えてる。



あたしが小学6年生で、あっくんは6つ年上の高校3年生だった。


あっくんは、すごく頭のいい大学に行くってお母さんが言ってた。



ひとり暮らし、なんて言葉から、遠い大学なんだって簡単に予想がついた。



「大学で勉強するんだよ」


「なんで勉強するの? あっくん頭いいのに」



それは、今思えば「遠くに行かないでよ」って伝えたかったんだと思うんだ。