もどかしくて、なのに決して触れることができなかったあの切なさ。

「……春輝」

「ん?」

少しだけ腕の力をゆるめ、ふわふわと頭を撫でる。

サラサラな髪の毛の感触が嬉しくて、時折髪をすきながらそうし続けた。

春輝は嬉しそうに手にすり寄ってくる。

そして、その小さな両手をいっぱいに広げて、俺に抱きついてきた。

「空夜、あのね?」

「なんだ?」

「……私、伝えなきゃいけないことがあるの」

「あぁ。俺もだ」

「……空夜も?」

「…あぁ」

俺は、春輝から少し離れると、コツンと額同士を合わせる。

すると、春輝はいつもと違い顔をぼっと赤くさせた。

それがまるで、俺のことを意識してくれてるみてぇで嬉しかった。

「……好きだ」

俺は低く呟いて、その真っ赤な頬に唇を押し当てた。

「ひゃっ…」

更に顔を赤くさせ、俺から離れようとする春輝を離さまいと俺は思い切り抱き寄せる。

「逃がさねぇよ。
この時がくるのを俺がどんだけ待っていたと思ってんだ」