「……ど、どうしたの?」

困惑気味の春輝だったけど、俺は無言でギュウッと春輝を抱きしめていた。

「……空夜?」

「……っ」

「……泣いてる、の?」

頬に温かな液体が一筋、ツゥ……と伝った。

ずっとずっと不安だった。

こいつがいなくなんじゃねぇかって。

「……何度も、何度も、同じ夢を見ていたんだよ」

「夢…?」

真っ白な世界のなか。

ポツンと佇む、翼をもった小さな天使。

手を伸ばしても届かない距離。

呼べば振り向いたその少女の瞳は、涙で濡れていた。

「お前の夢だ」

気づけばいつも見ていた。

病室で春輝の手を握って寝ていたときも。

家で一人布団のなかで寝ているときも。

「……こんなに近くにいるのに…っ」

その春輝がでてくる夢を見た後は、いつもいつも胸が苦しかった。

近くにいるのに遠くて。

届く距離なのに届かなくて。