翼~開け放たれたドア~

「……春輝」

恐る恐る、名前を口にする。

「……ん」

酸素マスクのせいで話しづらそうだが、それでも返事が返ってくる。

それだけで、俺は泣きそうな思いだった。

あんなにも待ち望んでいたこの瞬間。

名前を呼んで、それが返ってくることがこんなに嬉しいだなんて、俺は思ってもいなかった。

「く、うや……」

籠もった声だけど、確かに俺の名前を呼ぶ。

「なんだ?」

「……あ、りが…と………」

口角を少しだけ持ち上げ、笑顔を作る春輝。

あの夢のことを言ってるんだ、と直感的に思った。

俺はたまらなくなって、春輝のその柔らかな頬をすっと撫でる。

くすぐったそうに目を細める春輝に、俺は「どういたしまして」と微笑んだ。