弱いまんまはもう嫌なんだよ。

何にもできないまんまで、終わらすことはもうしたくないんだ──。





「……海さん」

俺は、春輝の顔を見つめたまま、左前あたりで座っている海さんを呼んだ。

「なんだ?」

そう促す海さんの声に導かれるように、俺は心のなかから出てきた言葉を口にしようとした。

だが、なんだか上手く言えなかった。

言葉にできなかったわけじゃねえ。

むしろその逆だ。

それを言葉にしちまったから、もし否定されたらと思って怖くなった。

だけど、海さんは静かに立ち上がると、俺のところへと歩いてきた。

ギシリとなったイスのスプリングの音にドキリとして、海さんに視線を向けた。

思わず身構えたが、海さんは俺に何もすることなく背後にたつと、

「……言ってみろ」

命令口調なのに、すげぇ優しくそんなことを言う。

なんだろうな。やっぱり兄妹なんだと感じる。

似てるんだ。根本的なところが。

俺は、重い口をゆっくりと開く。

その言葉を言うのに、どれくらい時間がたったんだろう。

もしかしたら数秒だった気もするし、数分にも感じられる気もした。

「俺……強くなれますか?」

俺は、絞り出すように小さく呟いた。





──ピッ…ピッ…ピッ…

もう聞き慣れてしまった機械音が鳴り響く病室のなかで、俺らはしばらく静まり返っていた。