感情や自分……。

春輝があらゆるものをそれに閉じ込め、封印していたものだった。

天使は鳥籠へと近づく。

それは、人1人分どころか、5人くらい入れそうなほどの大きさのものだった。

中は、まるで何度も絵の具を塗り重ねたように“赤“一色。

だけど、春輝が見た夢のように、人が血だらけで倒れているということはなかった。

代わりにあるのは、十字架と錆びた鎖だった。

その鳥籠の扉は開け放たれており、天使は優しく微笑んだ。

「いったん落ちても…、飛び方を忘れても…、あの子の翼が汚れていても……、翼を一度失っても……あの子はまた飛んでいくのね」

錆びた鎖は引きちぎろう。

重い十字架は置いていこう。

そんなに自分を責めないで。

誰も君を責めたりしないよ。

「どんなに無くしても、あの子は必ず見つけ出す……」

自分の翼は汚れていると言っていた春輝。

だけど

「ふふふっ………だから、あの子は何度でも翼をその背中にはやすのね…」

そのたびに、白さをまして───






さあ、その背中に翼を生やして。

開け放たれたドアの向こうは、きっと光に溢れてる。

ほら、こんなにも…温かな光が……。