翼~開け放たれたドア~

「あの人は、婚約者に離婚届を置いて家を出た。
家のことに反発していた海を連れてね。
私も、お父様の反対を押し切って家を出たわ。
あの人は政略結婚だったこともあったから、婚約者も離婚を承諾してすぐに離婚が成立した。
ちょうどそのころよ。
あなたが私のお腹に宿っていることがわかったのは」

お母さんは私の頭を撫でた。

2人は、私が生まれてすぐに結婚したらしい。

海お兄ちゃんも、「妹ができた!」と喜んでいて、私をよくかまってかわいがっていたと、お母さんはおかしそうに笑った。

「ふふ…。海はホントに春輝のことが好きみたいでね。
私やお父さんよりもずっと一緒にいるもんだから、あなた、海に一番懐いちゃって。
何をするにも海について回るのよ?」

ほんと、妬いちゃうんだから、とお母さんは呟いた。

でもそのあと、程なくしてお父さんは病気で入院。

そして静かに、穏やかな顔で眠るように亡くなったらしい。

「確かにそのときはお母さんは泣きまくったけど、覚悟してたことだったから」と、お母さんたちは一週間くらいしたときには、泣くことも無くなったのだという。

残されたお母さんとお兄ちゃんと私は、それから一年、特に何事もなく一緒に住んでいた。