「あらあら、ばれちゃってたの」

少しだけ、いたずらっ子のように舌をだしておどけてみせるお母さんがおかしくて笑ってしまった。

「……あの事故はね、篠原組が仕組んだことだった。
あなたを狙えば、私か海が庇うと思ったのね……きっと。
万が一のために手加減はしてたみたいなんだけど、打ち所が悪くて………。
…ごめんなさいね。春輝。
寂しい思い、させて…っ」

私が映っている瞳に薄い膜がはったかと思うと、目尻から涙が次々とこぼれ落ちる。

「側にいてあげられなくて…。
そのせいで、私や海のことも……、それに、“寂しい”も“好き”も忘れさせてしまった……」

私はふるふると首を横に振った。

「違う……。お母さんのせいじゃないよ…っ!
お母さん、私のこと愛してくれてたんでしょう?
私、それだけでいいもん…っ」

そう、それだけでいいの。

私は、それだけでいいから。

「だから…笑って?」

そうしたら、私は生きていけるから。





「……ふふ。
いつまでも子供なわけじゃないのね?
なぁんか寂しいなぁ…お母さん」

あぁ……、その笑い方。

やっぱり、私は…

「…大好き」

「あら。大胆ね?春輝。
私も、春輝のことは大好きよ?」