「こんなとこで立ち止まってんじゃねぇよ。
薬とか、人殺して臓器売ったりとかで稼いで大きくなったってなんになる?
俺はそれが嫌でここを出たんだ」

“ごめんな。春輝…ごめん、な…”

ふと、水風を潰したときに、まだ記憶を忘れていたときだったから、私にとっては知らない人だった海お兄ちゃんが泣きながら抱きしめてきたことを思い出す。

“守れなくて…側にいてやれなくて…、助けてやれなくて……ごめんな…?”

何度も、何度も謝るその人。

どうしてか胸が締め付けられて、『ここを潰しちゃダメだ』と、なぜか思った。

いつも通りにできなくて、なんでか無償に懐かしいと感じていたことを覚えている。

5年前。

だけど私は、実の兄たちを潰したんだ。






「あ…」

どうして、今まで気づかなかったんだろう。

ごめんね、なんかじゃ許されないのに。

「……俺は…」

「迷う必要なんかねぇよ。
答えはひとつ!どうせもう赤城組は終わりだ。
だったら……もうここにいる理由も、足枷もねぇだろ?」

海お兄ちゃんは、優しくて強い。

「まだ、これでも迷うか?」

「……ふっ。いや、答えは確かにひとつだな」

優しくて、強いからこそ、水風の総長は続けるべきだったんだ。

啓悟お兄ちゃんの答えを聞いて満足そうに笑って、再び歩き出そうとした海お兄ちゃんの服の裾を掴む。