「……んで…言っちゃうんだ……よ…」

掠れたその声はひどく弱々しかった。

さっきまでとは全然違う、その悲しげな表情。

私は、ゆっくり、ゆっくり……その頬に手を伸ばす。

少しだけ触れると、ピクリと肩を跳ねさせてから、赤城啓吾は初めて私のことを、その不安げに揺れる瞳に映した気がした。

見上げるその瞳は、お兄ちゃんと……そして私と同じ、紺色だった。

「──ねぇ…、お兄ちゃん…」

初めて、私は。

この人のことを“家族”として呼んだ。

「私が、いるよ」

「え…?」

「私が、お兄ちゃんがもう寂しくないように、お兄ちゃんの側にいるから。愛するから」

だから…お願い。

「家族に……なろ?」

恐る恐るだけど、私はそう言った。

「お兄ちゃんがホントは優しいなんてこと、私知ってるよ。流雨が教えてくれたもん。
路頭で迷っていた流雨に、お兄ちゃんが声をかけたことも。
流雨の名前はお兄ちゃんがつけたことも。
ねぇ、だから…もう傷つけないで。
皆、私の大好きな人たちだから…」

でもね、それはね。

王覇の皆や、雷、龍也、それに海お兄ちゃんだけじゃないよ。

そう言うと、私の目の前の人は首を傾げて不思議そうにするから

「……啓悟お兄ちゃんも、だからね?」

そう言って、初めて。

私はこの人の前で微笑んだ。