「おい、母さん!しっかりしろ!!」

大好きなお母さんの白い髪が赤に染まっていくのを、ただ見るしかなかった。

お母さんの腕から力が抜けて、お兄ちゃんに身体を引っ張られ、自分が血だらけになっていても、私はただ茫然とお母さんを見ていた。

そんな光景を見ていて、

──『私がお母さんを殺した』

そんなことを思っていたんだ。





近くにいた車から知らない人がでてきて、私の腕を強く掴んで、やっと我に返った。

「だ、れ…?」

でた声はひどく震えた。

私を見る男の目があまりにも冷たくて、怖かった。

お兄ちゃんはお母さんの身体を揺さぶり、何度も呼びかけていたけど、こちらに気づいて近づいてきた。

「誰だ?お前…。春輝を離せ」

警戒心を表に出し、お兄ちゃんは私に手を伸ばした。

だけど、

「い、いやだっ!お兄ちゃん!!」

「おい待て!!」

知らない男は、私を車に乗せようとする。