だけど、次の瞬間には

「“春輝”は…」

──プツン、と。

私のなかで何かが、切れるような気がした。

「止めろ!言うんじゃねえぇぇえ!!!」

雷の、悲痛な叫びのあとに

「いやあぁぁぁああ!!!」

頭のなかで響くあの人の声と

「“『春輝』は死んだんだ。跡取りとして生きろ”」

後ろから聞こえる、赤城啓吾の声がシンクロしてしまった。




やけに鮮明に、赤城啓吾の声は私に届いてしまった。

目を瞑って、耳を塞いで、叫んだにも関わらず……。





──無意味、だったんだ。

“私”を認めてくれる人がいたとしても、私は結局は抜け出せないんだ。

『言葉』が、私を暗い場所に閉じ込める。

「おい、春輝!?」

耳を塞いでいた手から力が抜けて、スルリと滑り落ちるようにおろす。

雷の声を無視して、私は2人から離れた。

涙で濡れた頬がひんやりと冷たい。

離れたとたん、世界から色が抜けたような感じがした。

先ほどまで一言も発さなかった、直たちと龍也が私を呼ぶ声が聞こえたけど、それさえも遠く聞こえてくる。