「君も哀れですねぇ…。
生まれが生まれだからしょうがないですけど。
まぁ、見ていて滑稽で飽きないから、私にとっては好都合ですが」

ニヤリと笑う彼の声に、拳を握りしめる。

ギリッと噛んだ唇からこ少しだけ鉄の味が広がるのに、私は気づかないふりをした。

「無駄なのに、私たちを攻めてくるなんて君の仲間たちは本当に考えのない──…」

──耐えろ。耐えろ。

こんな奴でも、さすがに今は殺れないから動いちゃダメだ。

今動いてしまえば、空夜たちが危ない。

そう、自分に言い聞かせる。




赤城 啓悟…。

お父さんの許嫁と、私のお父さんとの間に生まれた、赤城組の次期組長…だと表では言われている人。

つまり…、私の腹違いの兄だ。

知ってる。

この人が私を嫌っていることも、…そして憎んでいることも。

じゃあなんで私は、自分を憎むこいつの所にいるのかと言うと、それは一昨日のこと。