だから、外へと踏み出した。

物心ついたころからお袋はあんなんだったからかはわからねえけど、俺はそれまで外にでたことなんてほとんどなかった。

つっても、そんときの俺はまだ5歳くれぇ。

だから、見るもの全てが新鮮だったのは、当然だったかもしんねぇな。




歩いていくたびに通り過ぎる人。

痛いほどの視線。

ボロボロの服で1人で歩く子供の姿は、他の人にとっちゃ物珍しかったんだろう。

だけど、関わることは誰一人としてしようとしない。

この世界は、自分が一番の人間で溢れかえってる。

あの人以外の人としか関わったことねぇから、まぁ俺にとっちゃあ好都合だった。

でもまぁ、そんな人たちの中でも、物好きっつーのはいるわけで。

俺は、お袋たちに出会った。

“あら、どうしたの?”

あんときのことは今でも忘れることなんてできねぇな。

初めて声をかけられて。

“じゃあ、一緒に行こうか。なぁ、お前”

“ええ。行きましょう?あなた。
ほら、君もおいで?”

初めて触れた、自分以外の温もり。

初めての、優しさ……。

それが嬉しかったのか、切なかったのか。

“……大丈夫。もう怖くないからな”

初めて、涙を流した。