翼~開け放たれたドア~

いつもいつも…、いつらこりねぇのか?

少しだけ苦笑してしまう。

すると、さっきから香っているこいつの香りがふわりと、よりいっそう強く鼻孔をくすぐる。

なんだろうな。

なんか、甘い感じがする。

なんとなく顔をあげると、それに気づいた春輝がこちらをみる。

グンと近くなった顔に、恥ずかしさがこみ上げてきた。

なのに、その綺麗な瞳から目がそらせねぇ。

いや、そらしたくねぇんだ。

だけど、段々と顔が熱くなってくるのがわかる。

……あーぁ、ほんとなさけねぇな…俺。

前までの俺じゃあ、こんな風になるなんて考えられなかったな。






「ねぇ、空夜」

形が整った小さな口が動く。

「あ、のね…」

言いかけたあと、躊躇うように口を噤む。

眉を下げ、不安そうに俺の目を見つめてくる春輝を抱きしめつつ、頭を片手で撫でる。

「…なんだ?言ってみろ」

そう言えば、春輝は微かに目を見開く。

その瞳には、戸惑いと、不安と。そして──

「……聞いて、くれる?」

怯えの色があった。

「私が、思い出したぶんの、過去……。
まだね?なんだかぼんやりしてるところはあるんだけど…。
でも、だいたいは言えるから…」