…なんかこいつら面白ぇな。

俺はいつのまにか口角をあげていた。

緑華の奴らを見て、下っ端も笑ってる。

直も、飛鳥も、秋人も、蓮も。

ここにいる全員が。




──なぁ、春輝。

おまえは知らないかもしんねぇけどよ。

ここにある笑顔は全部、お前が作ってるんだ。

お前は自分を責めてるけど、ここにいる人は誰一人として、お前を責めたりなんかしねぇ。

気づいてるか?

お前は必要とされてんだよ。

だから──




“もうどこにも行くな。ずっとここにいろ…。

俺の側にいてくれ”

声にならない声は、こいつに届いただろうか?

お前だけはもう…手放したくないんだよ。

“空夜”

俺は母親にそう呼ばれた記憶なんてない。

幼い頃からずっと、ずっと……。

“あんたなんかいなければ…”

母親の言葉が頭のなかに唐突に浮かんだ。

逃げるように目を瞑ってから、春輝のことを見つめる。

幼い寝顔が、俺の感情を揺さぶる。

手放したりなんかしない。

そう、思っていたのに。

お前は、優しすぎたんだな。

俺らを守るために犠牲になって…。

まさか、俺らの前からいなくなるだなんて。

ここにいる誰もが、想像さえしてなかったんじゃねえかと思う。

もし、いたとしても。

一体誰が予想していたんだろうか。