~雷 side ~

あんときの俺は、あの人に従うしかなかったんだ。

そう、あの人……。

篠原組組長だった、篠原シゲルに。





あの人はいろんな意味で怖いと言われていた人だった。

残酷で、逆らう人は、容赦なく潰していく。

だけど、あの人の怖さっていうのはそれだけじゃなかった。

むしろ、そっちのほうが、怖いと言われていた所以(ゆえん)だった。

あの人の本当の怖さは、人の過去や傷…、つまり、その人の弱みを盾にしたり、、心の底の願望を本人よりも先に悟ったりして、人をいいなりにさせてしまう、ということだった。

組の構成員はほとんどがそれのせいで、いいなりになるしかない人たちだ。

家族がいない人たち、経済的な理由で苦しんだ人たちなどは地位や金で操り、憎んでいる人を殺したいという人たちや、上にのし上がりたいという人たちなどは組の力や権力で操った。