「え、春輝が…!?」

飛鳥の声が部屋に響いた。

「あぁ。春輝を拉致った男が、春輝のことを、“赤城春輝”と呼んでいた」

“…篠原…いや、赤城春輝を捕獲しました”

あの男は確実にそう言ったんだ。

つまり…

「春輝は…偽名を使っていたってことか…?」

「いや、そうじゃねぇんだ」

いきなりドアの方から声がした。

ガチャンとドアが開く音と共に、2人が中に入ってきた。

秋人の呟きを否定したのは

「雷さん…!?」

龍也さんを引き連れた雷さんだった。

……地獄耳か、この人は。

「理事長、それってどういうこと?」

チンプンカンプンだ、とでも言いたげな飛鳥。

雷さんはため息をつくと、「春輝は、複雑っていうか、まぁ言っちまえば簡単なんだがな」と前置きをした。