「クソ…っ!!」

龍也さんはメガネを乱暴にとると、前髪をかきあげて雷さんを見つめた。

その視線を感じた雷さんが、「わりぃ…」と顔を俯かせる。

「お前のせいじゃねえ。
赤城が相手で、しかも春輝さんがいたんだ。
どうしようもできなかっただろ」

「でも…っ、俺は春輝を…!」

悔しそうに顔を片手で覆い尽くす雷さんの声は震えていた。

何があったのかはわかんねぇけど、雷さんも過去に何かあったんだということはわかった。

…しかも、それには春輝が絡んでいることも。

「とりあえず戻るぞ。
ここにいても仕方ねえ」

龍也さんの一言で我にかえる。

俺は直たちのことが心配になり、あいつらのところへ駆け出した。





……春輝…。

気がつけばいつもお前のことを考えている。

なぁ…、お前はいつも何を考えている?

教えてくれよ…。

「…んで……こんなに遠いんだよ…」

雷の音が響き渡り、俺の声はかき消される。

目を瞑れば真っ先に思い浮かんだのは、見たこともないあいつの泣き叫ぶ姿だった。