「ほう…惑わされましたか。
確かにこの子は魅力的ですからねぇ…」

男が、春輝の白い髪に指を入れる。

ポタポタと垂れる雫が、光った雷に反射して、白い髪の色を際立たせた。

「気高く戦う姿は美しく、翻る白い髪はまるで翼のよう。本当においしい子だ」

ゾクリと身体が凍った。

笑う男の目が、あまりにも冷たくて。

「だからこそ…」

男は春輝の髪を一房すくいあげると、

「……その翼をへし折ってしまいたくなる」

グシャリと、強く握りしめた。

「てんめぇ…」

今まで黙っていた龍也さんが怒りを露わにするが、

「弱った鳥の翼を折ることなんて容易いことです。
まぁ、そんなことをしたら殺されてしまいそうなので、やはり籠のなかに入れておくのが一番でしょう。
…それでは失礼します」

「赤城っ!待ちやがれ!!」

雷さんの制止の声に背を向け、男は車に乗り込む。

俺らは駆け寄るが、車はそのまんま走り去っていった。