雷さんと龍也さんが俺の横を走りすぎ、春輝へと近寄る。

「春輝、大丈夫だ。帰ろう?」

「春輝さん…風邪引きますよ」

それぞれ優しく声をかけ、あと一歩で手が届く…そんな距離まで来たとき。

「近寄んじゃねぇよ」

ゾクリとするほどの冷たく、低い声。

背筋が凍りついて、俺は春輝を初めて怖いと思った。

「何?お前らも俺の相手してくれるの?」

その言葉に、俺は目を見開いた。

「春輝…お前…」

雷さんの戸惑いの声。

雷さんもわかってるんだろうな。

春輝は、雷さんたちを認識していない。

そして、雷さんの声に、春輝はピクリと肩を揺らした。

「……“春輝”…?」

その声には悲しみが。

その目には

「俺は…」

こっちがつらくなるほど

「“私”なんて大嫌いだっ!!!」

憎しみがこもっていた。

俺はただ何もできずに、春輝を見つめていた。

春輝の悲痛な叫び声は、俺の心に深く突き刺さったんだ。

~空夜 side end~