空夜を拾ったのは相澤グループの社長のその妻だ。

主にホテルなどを経営している、品川コーポレーションと同じほどの財政力を持つ会社だ。

つまり、空夜は跡取りということになる。

「…恨んでるわけじゃねぇ。
けど、すげえ悲しい。
あんなんだけど、親だったからな。
でも今は、“相澤”っていう場所があるから、産んでくれたお袋には感謝してる」

空夜の顔はどこか自慢げにも見え、それが嘘じゃないってわかる。

なんだろうな。

「うらやましいな…」

そんなふうに思える人たちがいて。

産んでくれてありがとうだなんて思えて。

私は、産んでくれなくてもよかったと思う。

誰も望んでいなかったんだ。

“私”が産まれてくることなんて。




「お前、寂しいのか…?」

「え…?」

“寂しい”…?