「親父は知らねえ。
物心ついたときにはお袋1人だった。
だけどそのお袋は、俺になんの興味も示さなかった。
家にはほとんど帰ってこなかったし。
ふっと帰ってきたかと思えば、すぐに出て行くの繰り返し。
週1ぐらいで来てたな、確か。
そんときに時々思い出したかのように食べ物置いていってな」

空夜をチラリと見上げる。

パチッと目があう。

空夜は穏やかな顔で、私の頭を優しく撫でた。

「だけど、俺が6歳のとき、いつもなら帰って来る頃なのにお袋は帰ってこなかった。
腹は減るし、そんときは冬だったらすげえ寒いし、それで風邪引いてさ。
家にはなんもねぇからとりあえず外にでた。
ふらふらと歩き回って、意識が朦朧としてきたとき、今の親に声をかけられた。
それから俺は、今の家に連れてこられて、今の親は子供に恵まれなかったのと、俺をほっとけないってことでそのまんま養子になったんだ」