「ごめんな」

「謝らないで、父さん」

いきなり頭を下げる父に、直は声をかけた。

「いや、本当にごめんな。
お前のことをちゃんと見てやれなかった…。
父親失格だ」

「そんなこと…」

直は眉を下げ、己の父を見つめた。

「…言われたよ。
お前自身を見てやれと。
跡取りとしか見てこなかったんだ。
私はお前にひどいことをしていたんだな」

すまなかった、とまた頭を下げる父。

そんな父の姿に、直は胸が痛くなった。

だけどそれと同時に、心が温かくなるのを感じていた。

「…いいよ。今気づいてくれればそれで」

直にとっては何気なく言った言葉だったが、父は目を見開いてから、ふっと笑った。

どうしたんだろうと直が首を傾げると、父は首を横に振った。

「はは、かなわないなぁ…、あの子には」

そう呟いた父の顔は心なしか優しげで、直はますますわからなくなった。

「父さん?」

弱々しい声音をかけると、父は穏やかな顔を直に向けた。