直はただその場に立ち尽くし、春輝は振り返ることをしなかった。

雷と龍也は、直に見向きもせずに春輝の後を追う。

だけど直は、2人の顔と春輝の顔が頭にこびりついて離れなかった。

2人の、春輝を見つめる悲しそうな顔と。

春輝の、憎しみと苦しみに歪んだ顔が。





残ったのは、息苦しいほどの沈黙。

それを先に破ったのは、

「…直、話をしないか」

直の父親の、戸惑いと決意の入り混じった声だった。