悲痛な声は、雷と龍也だけでなく、直の父親の顔さえも歪ませた。

悲しく、苦しく、切ない、声なき声。

その言葉は、春輝の過去の闇を少しだけ語っていた。

春輝は、直のことだけを言ってるわけではなかった。

春輝自身もそれに苦しんでいた。

だからこそ、直の苦しみがわかり、そして父親に怒れた。

春輝は、泣きそうに見えるほどに顔を悲しみに歪ませると、「…ごめん」と小さく呟いた。

そして、強く掴んでいた手をそっと離すと、そのままソファーにまた座った。

「…いや、謝るな」

雷は、ポンポンと春輝の頭を叩く。





「……直は」

春輝は呟くように言った。

「直は、優しい。
怒ると怖いところもあるけど、みんなのことをよく見てるし、みんなを笑顔にできて、みんなにとって…、王覇のなかで、必要とされてる人だ。
副総長だってやってる。
だから……」

春輝はフードをとると、直の父親の目を強く見つめた。

「直を、辞めさせないで。
王覇から…奪わないでやってください」

春輝の真摯な声音は、直の父親の涙腺を壊し、溢れさせた。

とめどなく溢れる涙は、止まることを知らない。