長い前髪をはらうと、苦しそうな声で母親を呼んでいたのに、穏やかな顔をしていた。

だけど、閉じられた目から透明な雫が一粒、零れ落ちた。

ゆっくりと瞼が開いて、真っ黒な瞳が姿を表す。

「春輝…?」

その瞳が涙で揺らめく。

「あれ…空夜?」

まだボンヤリとしているらしく、少しだけ目がトロンとしている。

俺は春輝の目元を指でそっと拭った。

「お前…泣いてんぞ。何の夢見てたんだ?」

「え…っ?」

春輝は目を見開き、おそるおそる目元に指をやる。

春輝の指には光る涙が少しだけついていた。

「あれ…?わ、たし…」

信じられないといった様子の春輝。

俺は起き上がった春輝の頭をそっと撫でた。