翼~開け放たれたドア~

「──春輝」

不意に。

優しく、強く、春輝の名前を呼んだ奴。

「すいません、雷さん。失礼します」

「相澤空夜……」

そいつは、俺の服を握りながら震えている春輝の側へと歩いてくると、春輝を

「は…っ?」

抱き上げた。

でてしまったまぬけな声に自分で呆れた。

「く、うや…」

「大丈夫だ。ここはなんもねぇから」

柔らかなその声音に、春輝は落ち着きを取り戻しつつあった。

すげえ…。

春輝は基本、人が嫌いだから、素のときは近くにいるのさえ嫌がるときがある。

だが、触らせるだけでなく、抱き上げられても大人しくしてるってことは、相当心を許してるってことなんだろうな。

俺なんて、すんげー時間かかったのに。

まあ、あのときは今よりもっと人を拒絶してたけどな。

それこそ、近くにいるだけで震えてしまうほどに。