志那は自らの監視者“使い”の青年、南雲諒太(なぐも・りょうた)に一人になる許しをもらい、その場を離れた。

使いは“かみさま”となった彼女達が力を勝手に使わないように、と監視をする人間の事。

彼らだけは特例で救世や破滅の力が通用しない無効化の力が与えられている。

万が一“かみさま”が暴走をした場合でも、それを止める事の出来る唯一の存在となる為でもある。

仕事中、傍を離れることはいくら信頼関係があったとしても危険な事であった。

いつどこで何が起こるのか、予測する事は出来ないからである。

しかし南雲はそれを重々承知の上で、志那を一人にすることを認めたのは、

“少しくらいなら良いだろう”と思ったからだろう。


「ありがとうございます。すぐに戻りますのでご心配なく」


ニコリと優しく笑みを浮かべ、志那は南雲の元から去って行った。


ずっと室内にいたせいからなのか、志那は真っ先に中庭へと足を運んだ。

そこは人々で溢れ返っていた。孫であろう若い女性に車いすを押してもらいながら、近くを楽しそうに散策する老人。

この時代では既に珍しいものとなってしまった紙飛行機を作り、看護師と飛ばしあいをしている幼い子供たち。

その光景を目のあたりにした志那は、本当に彼らは病を患っているのかと疑う気持ちと同時に、様々な思いに駆られていた。