シュパッ!……とボールがネットをくぐり抜ける軽快な音に、心臓が早鐘を打つ。
ボールを放つときの真剣な尚人の表情に、一瞬にして虜になっていた。
「よっしゃあ! スリーポイント!」
尚人の足元にはスリーポイントのライン。シュートが上手く決まったことが相当嬉しかったのか、ガッツポーズをしながらリングを見つめて笑っていた。
シュートを打つ瞬間とは打って変わって、くしゃりと緩んだ表情。そのギャップにあたしは弱い。
現に喉の奥で言葉がつっかえてしまい、いつもの調子で声をかけることが出来ない。
……ほんと、尚人ばっかりずるいよなぁ。
こんなにもかっこよくシュートをして、しかも決めるなんてさ。
おまけにあたしを、こんなにもドキドキさせるんだから――。
全身にうるさい音を響かせている犯人がいる胸元。そこをジャージの上から、ぎゅっと握り締めた。
だけど出てくる直前まで来て詰まったままの言葉を、未だに言えそうにない。
そうしている間に後ろから「ナイシュー!」という声が飛んできて、あたしは有り難い気持ちと複雑な気持ちで振り返った。
そこに立っていたのは、男バスの2年生の小山先輩だった。先輩はあたしの姿を視界の隅で捕らえて微笑を浮かべたあと、尚人に声をかける。
「尚人、さっきの良いシュートだったじゃん」
「あ、小山先輩! あざっす!」
「おまえ最近調子良いよなー。こんなんじゃレギュラーの座、尚人に取られそうで怖いわ」
「俺なんてまだまだっすよ。先輩には敵いませんって!」
「お世辞は良いって。おまえが上手いのは俺が保証するから」
小山先輩はにっこりと笑って尚人の肩をポンポンッと軽く叩いた。尚人の表情は先輩の背中に隠れていたからよく分からない。



