「……おかえり」

「冷たいー。とものために理央と別れてきたのにぃ」

「あたしのせいにするなら、どうぞご勝手にやってください。あたしは別れろなんて言ってない」

「冗談だよー。へへっ、これでともと正式に付き合えるねえ」


あたしは黙ったまま筑前煮を火から下ろして、別の鍋に入っている味噌汁を温めた。


セフレと別れてこんなに嬉しそうな男は絶対いないだろう。仮にも自分から誘ったくせに。


今朝、学校に行く前に蒼ちゃんがいきなり「今日理央と別れてくるよ。俺なりにけじめつけたいからさ。そしたら、俺と付き合って」と言われ、呆気に取られたあたしは「……はあ。頑張れ」と答えることしかできなかった。


別にどちらかが付き合ってと言わなくとも、あたし達はその前から手を繋いだり抱きしめ合ったりキスをしているのだから今更その関係を改めなくてもいいとあたしは思うけど、そこは蒼ちゃんが言う「けじめ」らしい。


とにもかくにも、本日、相模智子と川島蒼大は満を持して正式に付き合うことになった。