少女達は夢に見た。

「付き合ってないって!…だってあたし、好きな人いるもん。」


あの恥じらうように赤らめた顔を、今でもはっきりと覚えている。


柚奈にこんな顔をさせる人は一体誰?


瞬間、私の中の大事なナニカが砕け散った。


私は…知らなかった。


何にも知らなかった。


聞きたくなどなかった。


傷ついた。


だが、もう遅い。


「今度ね、告白しようと思ってるんだ。」


追い討ちをかける柚奈。

これなら、浅間くんと付き合ってましたと言われた方がましだった。


恥ずかしそうにしながらも、楽しそうに笑う彼女を見て、とても苦しくなった。


柚奈は…もう、あの柚奈じゃない。


小さい頃から一緒にいて、遊んだり、喧嘩したりして。


友として、ずっと柚奈のことを見てきた。


しかし、今まで一度も、柚奈がそんな話をしたことはなかった。


どちらかというと、現実よりもアイドルなんかにお熱だった。


告白されても見向きもしていなかった。


だから、私は少し勘違いをしてしまったんだ。


柚奈はそういうことに興味が無い。


だから、これからも、お互い一番大好きな人、であり続けられるんだ。


そんなわけないに。


本当はわかっていた。


いつかは変わるのだと。

分かってはいても、どこか願うような気持ちがあった。


しかし、浅間くんと柚奈がどうこうって噂を聞いて、現実を突きつけられてしまった。


とても耐え難い現実。


それでも夢を見続けられたのは、事実を知らなかったからだ。


それが、もう出来ない。

聞かなかったことには、出来ない。


無性に斉藤さんを恨みたくなった。


聞いたのはまぎれもなく私だけど。


他人のせいにしてしまいたかった。


それくらいに私の心はバキバキに折れてしまっていたのだ。


その時の私は、柚奈の目に、どう写っていたのだろうか。


きっと、柚奈は私の反応なんて、見ていなかった。


そう。


「彼」に想いを馳せ、楽しそうに微笑んでいたのだから。


一体誰なの。


いつから好きだったの。

彼女の横顔をみつめ、声にはならない問いかけをする。


中学生になってからだろうか。


クラスは同じだったのに、何にも気づかなかった。


いや、自分でも無意識の内に、目にいれないようにしていたのだろう。


自業自得…というべきなのだろうか。


まあ、気づいたところで、きっとどうにもできずにいただろう。


これは、避けられないことだったのだ。


人間なんだから恋をするのは当たり前だ。


なにを、気にしてるんだ。


大したことじゃないじゃないか。


友達相手に…気にしすぎだ。


こういう時に、役にたたなくてどうするんだ。


そうやって、何度も自分に言い聞かせた。


砕け散ってしまったものの代わりになりそうなものを、無理やり、必死に、私の中に詰め込んだ。

それでも、私の中の汚い感情は収まらなかった。

こんなやつ、気持ち悪いよ。


柚奈に申し訳なくて、仕方なくて、情けなくて、どうしようもない。


私なんて、親友失格だ。