「あの、先輩は職業体験、どこに行くんですか」
「トリマーとか、獣医さんの関係のところ」
無愛想な答えにも、優しさを感じるようになっていた。
「動物、好きなんですね」
先輩は微かな笑みを浮かべる。
「ネコ科の動物が…」
しかしすぐにうつむかれてしまった。
「ネコ科ですか。猫飼ってるんですか?」
「うん。茶トラと黒いの。アキネと、フユコ」
少し照れたみたいに視線を落としながら猫の名前を教えてくれた。
アキネとフユコか。
ん?
もしかして…
「秋にきた猫で、アキネ」
やっぱり想像通りの由来。
じゃあ…
「冬にきた猫で、フユコ…ですか」
「正解」
繋げて“秋冬”、“ネコ”ということか。
まさか、先輩が考えたんじゃないよね。
そんなお茶目なネーミングセンス。
「私が考えたんだよ」
吹き出しそうになってしまった。
「可愛い名前ですね」
少しだけ自慢気な顔をした。
普段大人っぽい先輩を見ているからこそ、ギャップがすさまじい。
笑いを堪えるも、肩が揺れてしまう。
笑うな!笑うな!
必死に自分に言い聞かせる。
「もう一匹来たらどうしよう…」
吹いてしまった。
そんなに真剣に悩まないで、千尋先輩。
先輩は、私が吹いたことに気づいてない様子で、なにやらブツブツ唱えている。
「“ナツニャ”で、“ハルン”とか?」
ナツニャ…ハルン…
春夏か
で、“にゃん”!?
春夏秋冬はいいと思いますけど、それ繋げたら“ネコにゃん”になっちゃいますよ!
あまりに優しい顔を見せるので、そんなこと言えるわけは無かった。
「さあ諸君、これより第一回3送会会議を行う」
部活が終わり、美術室から三年生の先輩方が居なくなると、友紀ちゃんが呼び掛けた。
私達を集めさせ、なにかを黒板に書き始める。
“議題3送会出し物”
黒板左上に横書きで。
やや右肩下がりの不恰好な字である。
「ちなみに友紀は演劇をやりたいと思ってる!」
カナンは“やっぱりか”という顔をした。
「反対の人は挙手をしてね」
会議にしては強引な進め方だ。
そんなやり方で、一年生が参加できるわけがないだろうに。
すっかり萎縮しちゃってるし。
もし反対だったとしても、先輩にそんなことを直接言えるわけないじゃないか。
「反対。断固反対」
渡辺君が意見しなければ、決定していたであろう。
「じゃあ寸劇でいいよ。はい決定」
初めから友紀ちゃんは反対意見に耳を貸すつもりなど毛頭なかったのか。
「演劇でも寸劇でも同じだろ。どこでやるんだよ」
しかし渡辺君はそう簡単には引き下がらなかった。
一年生が尊敬の眼差しで彼を見ていたのは…
気のせいだと信じたい。
「トリマーとか、獣医さんの関係のところ」
無愛想な答えにも、優しさを感じるようになっていた。
「動物、好きなんですね」
先輩は微かな笑みを浮かべる。
「ネコ科の動物が…」
しかしすぐにうつむかれてしまった。
「ネコ科ですか。猫飼ってるんですか?」
「うん。茶トラと黒いの。アキネと、フユコ」
少し照れたみたいに視線を落としながら猫の名前を教えてくれた。
アキネとフユコか。
ん?
もしかして…
「秋にきた猫で、アキネ」
やっぱり想像通りの由来。
じゃあ…
「冬にきた猫で、フユコ…ですか」
「正解」
繋げて“秋冬”、“ネコ”ということか。
まさか、先輩が考えたんじゃないよね。
そんなお茶目なネーミングセンス。
「私が考えたんだよ」
吹き出しそうになってしまった。
「可愛い名前ですね」
少しだけ自慢気な顔をした。
普段大人っぽい先輩を見ているからこそ、ギャップがすさまじい。
笑いを堪えるも、肩が揺れてしまう。
笑うな!笑うな!
必死に自分に言い聞かせる。
「もう一匹来たらどうしよう…」
吹いてしまった。
そんなに真剣に悩まないで、千尋先輩。
先輩は、私が吹いたことに気づいてない様子で、なにやらブツブツ唱えている。
「“ナツニャ”で、“ハルン”とか?」
ナツニャ…ハルン…
春夏か
で、“にゃん”!?
春夏秋冬はいいと思いますけど、それ繋げたら“ネコにゃん”になっちゃいますよ!
あまりに優しい顔を見せるので、そんなこと言えるわけは無かった。
「さあ諸君、これより第一回3送会会議を行う」
部活が終わり、美術室から三年生の先輩方が居なくなると、友紀ちゃんが呼び掛けた。
私達を集めさせ、なにかを黒板に書き始める。
“議題3送会出し物”
黒板左上に横書きで。
やや右肩下がりの不恰好な字である。
「ちなみに友紀は演劇をやりたいと思ってる!」
カナンは“やっぱりか”という顔をした。
「反対の人は挙手をしてね」
会議にしては強引な進め方だ。
そんなやり方で、一年生が参加できるわけがないだろうに。
すっかり萎縮しちゃってるし。
もし反対だったとしても、先輩にそんなことを直接言えるわけないじゃないか。
「反対。断固反対」
渡辺君が意見しなければ、決定していたであろう。
「じゃあ寸劇でいいよ。はい決定」
初めから友紀ちゃんは反対意見に耳を貸すつもりなど毛頭なかったのか。
「演劇でも寸劇でも同じだろ。どこでやるんだよ」
しかし渡辺君はそう簡単には引き下がらなかった。
一年生が尊敬の眼差しで彼を見ていたのは…
気のせいだと信じたい。



