「一瑠、波多瀬と仲いいでしょ?」
その日、私の席にやってきたクラスメートの斉藤彩子(さいとうあやこ)。
朝の、まだ数人しかいない教室で、いきなりそんなことを聞かれたのがそもそもの始まりだった。
確か、私と斉藤さんと、あと1人か2人居たぐらいだったと思う。
なぜかその日だけ斉藤さんは早く登校してきていた。
いつもは出席をとる5分前くらいに、違うクラスの女子と騒ぎながら教室に入って来るのに。
私の登校時間はいつも通りだ。
斉藤さんは、いつも柚奈のことを、“ちょろ吉”と呼んでいる。
いつのまにかついたあだ名で、その発祥は斉藤さんだったはずだ。
他にも柚奈のことをちょろ吉と呼ぶ人は居る。
なぜか4組の人まで知れ渡っていた。
柚奈は顔が広いせいでもあるのかもしれない。
誰もちょろ吉の由来なんて覚えてないけど。
それを波多瀬、と呼び捨て……しかも名字で呼ぶあたりで、何を言われるのかおおよそのことは想像がついた。
斉藤さんはいわゆるクラスのリーダー格女子。
いつも5人くらいとかたまって楽しそうにきゃーきゃーしている。
しかし、斉藤さんその5人の中の3人は実は嫌っているようだ。
前に愚痴……というか悪口を、隣の席の男子と話していたのをうっかり聞いてしまったことがあるのだ。
聞いたことがないだけで実は5人全員嫌いなのかもしれないけど。
柚奈ともクラスでは普通に話しているが…あまり好きではなかったようだ。
柚奈はわりと誰からも好かれるタイプなのにな。
あ、ひがみか。
一見、黒髪のボブスタイルがよく似合うオシャレで可愛い女の子なのに、なかみは腹黒い。
そういえば腹黒キャラの定番髪型は、うち巻きカールのボブスタイルだった。
なんだ。
ぴったりじゃないか。
ついでに、もう1人女子が話に加わってきたことで、もう明白だった。
軽く挨拶を交わす。
どうやら内容は聞こえていたらしい。
斉藤組の一人、五島桃(いつしまもも)。
柚奈と同じか、それより少し高いくらいの華奢な女の子。
ちなみに、斉藤さんが嫌っているうちの3人には入っていなかった子だ。
まあ、さっき言ったように実は嫌っているのかもしれないけど。
「……どうして?」
そこで仲がいい……ということを否定したりしたら、“なんだ、そうだったの”とか、“やっぱりね”なんて、楽しそうに笑って斉藤組に引きずり込まれたのだろう。
別に仲間にしてもらいたくはないからしないけど。
かといって、そこで素直に答えるのは癪(しゃく)だった。
なんだか、別に聞く意味ないけど取りあえず聞いてあげてる……そんなバカにしている感じがしたから。
「仲いいじゃん。」
「……うん。」
桃に急かされて答える。
やっぱり聞いてみただけかよ。
質問したのは斉藤さんだけど。
「波多瀬って、直人と付き合ってるの?」
「一瑠ちゃんなら知ってるでしょ?」
やはりか。
予想通り、聞いてきたのはそんなこと。
「知らないよ。」
できるだけ、愛想よく答えた。
睨まれたら後が怖い。
二人は不満げな顔をした。
すると、なにを思い付いたのか斉藤さんが不敵な笑みを浮かべる。
どうせ良くないことに決まっている。
しかし分かっていても、斉藤さんのその笑みはどこか好奇心をくすぐられるような力があった。
「じゃあ、一瑠から波多瀬に聞いてみてくれないかな?」
私は思わず苦笑した。
その日、私の席にやってきたクラスメートの斉藤彩子(さいとうあやこ)。
朝の、まだ数人しかいない教室で、いきなりそんなことを聞かれたのがそもそもの始まりだった。
確か、私と斉藤さんと、あと1人か2人居たぐらいだったと思う。
なぜかその日だけ斉藤さんは早く登校してきていた。
いつもは出席をとる5分前くらいに、違うクラスの女子と騒ぎながら教室に入って来るのに。
私の登校時間はいつも通りだ。
斉藤さんは、いつも柚奈のことを、“ちょろ吉”と呼んでいる。
いつのまにかついたあだ名で、その発祥は斉藤さんだったはずだ。
他にも柚奈のことをちょろ吉と呼ぶ人は居る。
なぜか4組の人まで知れ渡っていた。
柚奈は顔が広いせいでもあるのかもしれない。
誰もちょろ吉の由来なんて覚えてないけど。
それを波多瀬、と呼び捨て……しかも名字で呼ぶあたりで、何を言われるのかおおよそのことは想像がついた。
斉藤さんはいわゆるクラスのリーダー格女子。
いつも5人くらいとかたまって楽しそうにきゃーきゃーしている。
しかし、斉藤さんその5人の中の3人は実は嫌っているようだ。
前に愚痴……というか悪口を、隣の席の男子と話していたのをうっかり聞いてしまったことがあるのだ。
聞いたことがないだけで実は5人全員嫌いなのかもしれないけど。
柚奈ともクラスでは普通に話しているが…あまり好きではなかったようだ。
柚奈はわりと誰からも好かれるタイプなのにな。
あ、ひがみか。
一見、黒髪のボブスタイルがよく似合うオシャレで可愛い女の子なのに、なかみは腹黒い。
そういえば腹黒キャラの定番髪型は、うち巻きカールのボブスタイルだった。
なんだ。
ぴったりじゃないか。
ついでに、もう1人女子が話に加わってきたことで、もう明白だった。
軽く挨拶を交わす。
どうやら内容は聞こえていたらしい。
斉藤組の一人、五島桃(いつしまもも)。
柚奈と同じか、それより少し高いくらいの華奢な女の子。
ちなみに、斉藤さんが嫌っているうちの3人には入っていなかった子だ。
まあ、さっき言ったように実は嫌っているのかもしれないけど。
「……どうして?」
そこで仲がいい……ということを否定したりしたら、“なんだ、そうだったの”とか、“やっぱりね”なんて、楽しそうに笑って斉藤組に引きずり込まれたのだろう。
別に仲間にしてもらいたくはないからしないけど。
かといって、そこで素直に答えるのは癪(しゃく)だった。
なんだか、別に聞く意味ないけど取りあえず聞いてあげてる……そんなバカにしている感じがしたから。
「仲いいじゃん。」
「……うん。」
桃に急かされて答える。
やっぱり聞いてみただけかよ。
質問したのは斉藤さんだけど。
「波多瀬って、直人と付き合ってるの?」
「一瑠ちゃんなら知ってるでしょ?」
やはりか。
予想通り、聞いてきたのはそんなこと。
「知らないよ。」
できるだけ、愛想よく答えた。
睨まれたら後が怖い。
二人は不満げな顔をした。
すると、なにを思い付いたのか斉藤さんが不敵な笑みを浮かべる。
どうせ良くないことに決まっている。
しかし分かっていても、斉藤さんのその笑みはどこか好奇心をくすぐられるような力があった。
「じゃあ、一瑠から波多瀬に聞いてみてくれないかな?」
私は思わず苦笑した。



