でもいいかもれない。


「今日は部活終わったら1、2年で会議だよーん」


ドアを乱暴に開け、入ってきたのは噂のあの方。

次期部長、服部友紀(はっとりゆき)


嫌味なくらいさらさらの黒髪をなびかせ、陽気に元気な登場をしてのけた。


斎藤さんと同じボブスタイルなのに、どうしてこうも印象が違うのだろうか。


1年生の子は若干ひきぎみ。


「先輩達は今日遅刻やてー」


くるっと一回転。


制服のスカートがぶわっと広がりった。


「どうして遅刻なんですか」


「職業体験のアポとりとかなんとか」


後輩の質問にも簡単に答える友紀ちゃん。


カナンを見てみれば、露骨に嫌な顔をしていた。

カナンの嫌いな人は“”うるさい人”


部活中、いつでもだれよりも喋っている友紀ちゃんを、どう思っているかなんて、聞かずとも分かる。


直接言葉にしない分、その表情から読み取れる想いは何倍にも伝わってくる。


「てかこんだけしかいないの?」


「仕方ないよ、まだ部活始まる時間になってないんだし」


他に答える人がいなかったため、しかたなく私が答えた。


「だからって…なんで2年が溝口ちゃんと夏菜穂しかいないの。あと二人は?」


確かに少ない。


「帰りの会終わってないとか」


そこで初めて会話に参加したカナン。


「いやー。これは美術部死活問題だね!次期部長として、ゆゆしき事態を脱会させねば!!」


それ自分で言っちゃうのか。


私がそんなことを思っている間に、次期部長こと友紀ちゃんは、


どかこからともなく名簿を取りだし、今いるメンバーの確認をしだした。




「あっ!コラ5分遅刻だぞ」


遅れてきた部員二名を叱る友紀ちゃん。


「はあ?服部だってこの間遅刻してただろ」


「そうですよ。その前は無断欠席でしたよね」


悲しむべきかな


遅刻してきた部員二名とも、同級生である。


帰りの会などとっくに終わっていたはずだ。


渡辺君と、


もう一人は…


確認するまでもない。


「先輩達がいないからって意気込むのもいいですが、信頼のないリーダーなど士気を乱すだけです」


こんなに辛辣な男が、他にもいてたまるか。


「奏汰、言うね」


渡辺君だって感心してるし。


いや感心するなよ。


「まあそうだわな」


カナンの呟きは友紀ちゃんの耳にしっかり入ったようで、


精神的ダメージはかなりきたといった様子。


悪意のない攻撃は、ときに悪意のある攻撃よりも鋭い刃を持つ。


「これから気を付けます!」


自衛隊のように敬礼をきめる友紀ちゃんを、後輩達含め、みんなで笑った。


「だから、みんなもこれから気を付けようよ!」

友紀ちゃんのこういう所、私は結構好きだったりする。