そういえばカナンだった。


私と風見君が良い雰囲気だと言ったのは。


いつのことだ?


…などと思考を巡らすことにより
泣きたくなる想いを誤魔化した。





溜め息が出そうだ。


ふっと、千尋先輩の方を見る。


違う意味で溜め息が出そうになった。


“仕事する男は三割増しで格好よくみえる”
というけど、
女の場合も同じなのだろうな。


まえかがみになっているせいで
下ろしたままの髪が垂れてる。


邪魔そうに耳にかける仕草はなんとも大人っぽい。


先輩格好いいな…


しかしなかなか目が合わない。


集中してるんだ。


ざわざわと話し声が絶えない美術部で
先輩の集中は途切れない。


ちょっと虚しくなる。





窓にはテニス部。


あ、あの子サボってる…

なんか踊ってるし。


一人笑いを堪えていると、


「…なに?」


カナンに怪訝そうな顔された。


「な、なんでもないです」





「で、なんの話だっけ。」


風見君が美術室を出てから、カナンにふる。


「なんで避けてるの?」

「ああ、うん」


時間、かかりそうだな。

カナンの雰囲気からあやふやにさせてくれないことは明白。


「部長、鍵やっときます」


部長待たせるわけにもいかないし。


「ああ、わかったー」


「あ!こらまた夏海は…」


山吹先輩が叱る。


「堅いこと言わないの!」


部長は後ろから抱きつく様にしながら、山吹先輩を教室から押し出して



残った私達に手を振り帰った。


「お疲れ様です。」軽く二人でお辞儀して


「仲良いよねー、部長と渚左先輩」


カナンが微笑ましそうにする。


「そりゃあ…」


“恋人同士なんだし”


口に出す前に、違和感を覚える。


まさかカナン、先輩達がカップルって知らない?

「そりゃあ…なに?」


「カナン知らない?」


「なにが」


「なにって…」


鈍感なのか知らないのかどっちなんだ。


知らなかったとしたら喋るわけにはいかない。


そこで思い出す。


「カナン、同性愛ってどう思う?」


先輩達のことを知っているなら、否定的なことは後輩として言えないはず。


それにここまで言えばいくら鈍感な人だとしてもピンとくるはず。


ドキドキしながら答えを待つ。


「同性愛…ホモとかレズとかの?」


「うん」


そういうと聞こえが良くないけど。


「無いわ。」


「…え」


「あり得ない。」


即答。


しかも予想外の答え。


じゃあ…カナンは先輩達が付き合っていることを知らない?


「え、いちってそういう人?」


「ち、ちがうよ!」


なんでそうなった。


「ふぅん」と、微妙な反応をする。


どういうことだ。


歩乃香は有名だと言っていたのに。


話が違うじゃないか。


「で?」


「ん?」


「風見のことは?」


「あ。」