「いっちー、大丈夫?」
一部始終見ていたらしいアキが気にかけてくれた。
「柚奈……何て言ってたの?」
歩乃香も心配して、声をかけてきてくれる。
「うん。なんでもないって。」
微笑んで応えた。
なのに、2人は余計に心配そうな顔をする。
「一瑠ちゃん…。」
「2人とも、ありがとう。ホントに、なんでもないんだって。」
そんな言葉で2人が納得できるわけがないのは重々承知。
「じゃあね。部活頑張って。」
でも一刻も早くこの場を去りたかった私は
それだけ言って、逃げた。
これ以上あの場にいたら、2人の前でも泣いてしまいそうだったから。
2人とも、ごめん。
だって……
ショックを受けただけならなんとか涙を堪えられるけど、
そこで優しくされたら我慢なんてできるわけがない。
溜まった涙で視界がぼやける。
どうしよう。
ここで泣いたりなんかしたら、絶対目が腫れちゃう。
そんな顔で部活に行ったら泣いたってバレちゃうよ。
必死で堪えたのに、私の頬を、一筋の涙がつたってしまった。
無心になれ無心になれ無心になれ
早く涙を止めるには、それが一番いい。
何度も言い聞かせるのに、考えてしまう。
先程の柚奈の顔。
声。
動作。
名前。
二人の心配そうな顔。
無下にした私。
こんなことで泣いてしまう格好悪い私。
涙は一筋、また二筋と、頬をつたっていった。
幸い周りに人はいない。
水道で顔を洗い、涙を止めようと試みた。
そのあとに1粒涙が落ちたけど、それを最後に、涙は止まってくれた。
もう1度顔を洗い、タオルでふいて、鏡で自分の顔を確かめる。
鼻と目がちょっと赤い。
5分くらい呼吸を整え、赤みが引くのを待った。
また泣かないように、無心になるよう気を付けながら。
そろそろいいかな。
鏡で確かめる。
これなら…大丈夫かな。
なんとか、じっくり見られなければ泣いたって分からない位の顔になった。
部活、行かなきゃ。
タオルで顔を隠しながら美術室に向かった。
「し、失礼します。遅れてすみません…。」
何人かの部員がこちらをみる。
けれど、特に部長からなにか言われたりすることは無かった。
当たり前か。
もともと無断でサボる人が多いんだから。
顧問だってたまにしか来ない。
部員の視線を感じながら、自分の席へと向かった。
「いち、遅かったね。」
作業の手を止め、笑顔を向けたカナン。
私が座る席を残しておいてくれたせいで、隣には誰もいない。
「ごめん、カナンありがとう。」
どういたしまして、と言うと再び作業を再開させた。
私も製作を進めるため、絵具バケツを取りに室内窓側にある水道に行く。
ふと、ある人物が目に留まった。
拳を強く握りしめる。
けどそれだけじゃ足りなくて、歯ぎしりをした。
睨みつけるような私の視線に気付き、顔を上げたその人と目があった。
分かってる。
私が恨んでもいい理由はどこにも無い。
いくら柚奈を傷つけたであろう人物だとしても。
ちゃんと事実を知らない私が、その人を憎んだり、恨んだりするのは検討違いだ。
一部始終見ていたらしいアキが気にかけてくれた。
「柚奈……何て言ってたの?」
歩乃香も心配して、声をかけてきてくれる。
「うん。なんでもないって。」
微笑んで応えた。
なのに、2人は余計に心配そうな顔をする。
「一瑠ちゃん…。」
「2人とも、ありがとう。ホントに、なんでもないんだって。」
そんな言葉で2人が納得できるわけがないのは重々承知。
「じゃあね。部活頑張って。」
でも一刻も早くこの場を去りたかった私は
それだけ言って、逃げた。
これ以上あの場にいたら、2人の前でも泣いてしまいそうだったから。
2人とも、ごめん。
だって……
ショックを受けただけならなんとか涙を堪えられるけど、
そこで優しくされたら我慢なんてできるわけがない。
溜まった涙で視界がぼやける。
どうしよう。
ここで泣いたりなんかしたら、絶対目が腫れちゃう。
そんな顔で部活に行ったら泣いたってバレちゃうよ。
必死で堪えたのに、私の頬を、一筋の涙がつたってしまった。
無心になれ無心になれ無心になれ
早く涙を止めるには、それが一番いい。
何度も言い聞かせるのに、考えてしまう。
先程の柚奈の顔。
声。
動作。
名前。
二人の心配そうな顔。
無下にした私。
こんなことで泣いてしまう格好悪い私。
涙は一筋、また二筋と、頬をつたっていった。
幸い周りに人はいない。
水道で顔を洗い、涙を止めようと試みた。
そのあとに1粒涙が落ちたけど、それを最後に、涙は止まってくれた。
もう1度顔を洗い、タオルでふいて、鏡で自分の顔を確かめる。
鼻と目がちょっと赤い。
5分くらい呼吸を整え、赤みが引くのを待った。
また泣かないように、無心になるよう気を付けながら。
そろそろいいかな。
鏡で確かめる。
これなら…大丈夫かな。
なんとか、じっくり見られなければ泣いたって分からない位の顔になった。
部活、行かなきゃ。
タオルで顔を隠しながら美術室に向かった。
「し、失礼します。遅れてすみません…。」
何人かの部員がこちらをみる。
けれど、特に部長からなにか言われたりすることは無かった。
当たり前か。
もともと無断でサボる人が多いんだから。
顧問だってたまにしか来ない。
部員の視線を感じながら、自分の席へと向かった。
「いち、遅かったね。」
作業の手を止め、笑顔を向けたカナン。
私が座る席を残しておいてくれたせいで、隣には誰もいない。
「ごめん、カナンありがとう。」
どういたしまして、と言うと再び作業を再開させた。
私も製作を進めるため、絵具バケツを取りに室内窓側にある水道に行く。
ふと、ある人物が目に留まった。
拳を強く握りしめる。
けどそれだけじゃ足りなくて、歯ぎしりをした。
睨みつけるような私の視線に気付き、顔を上げたその人と目があった。
分かってる。
私が恨んでもいい理由はどこにも無い。
いくら柚奈を傷つけたであろう人物だとしても。
ちゃんと事実を知らない私が、その人を憎んだり、恨んだりするのは検討違いだ。



