少女達は夢に見た。

学校へ向かう足取りは重かった。


だけど、サボるわけにはいかないから。


いつも通り教室には一番乗り。


登校が早いのは入学してきた時からの癖。


もともと、人がいっぱいいる教室に入っていくのが嫌だったのと、


部活入ってからは、登校中、先輩に挨拶しなきゃいけないのが嫌だったから。


挨拶するタイミングとか。


最初から会わないなら、しなくていいし。


以前、そのことを柚奈に話したら笑われたっけな。


「お前は対人恐怖症か!」


って。


廊下を出て、誰か居ないか確認する。


2組に2人。


なんだか彼女と彼氏みたい。


仲良く話してる。


目を合わせないように気を付け、横目で見ながら、通りすぎた。


時間が5分、10分と過ぎていき、人が集まりだす。


教室のカーテンに隠れて、空を眺めていた。


曇り空。


しばらく眺めていた。


すると、後ろから声が。


「ここに居るの誰?」


私のことか。


この声はあれだ。


例の幼馴染み。


浅間君。


「私だけど。」


顔は見せずに無愛想に応えた。


「溝口?なにやってんの。」


「曇りぼっこ。」


「日向じゃないのか。」


そういって笑った。


だって曇ってるからそう言っただけなのに。


そんなに可笑しかっただろうか。


呼吸を整えて、またクスリと笑う。


早くどっかいってくれないかな。


「おはよー、直人。」


タイミングよく誰かに話しかけられ、私の後ろからいなくなってくれた。

私が浅間君に無愛想なのは、テンションが低いからじゃない。


柚奈と仲が良いからだ。

それに多分だけど、


浅間君は、柚奈のことが好きなんだと思う。


最近になって、そう考えると辻褄(つじつま)が合うと気づいた。


だからなんとなく、浅間君のことが苦手。


当の本人の柚奈は違う人が好きなわけだけど。


「あれ。そこにいるの、いっちー?」


カーテンから顔をだす。

「おはよ、アキ。」


「うん、おはよ!」


私の笑顔に、アキも笑顔で応えてくれた。


「珍しいね、柚奈といないなんて。」


アキが私と一緒にカーテンに潜りこみながら、言った。


え…?


柚奈、来てた?


自分の目で確認する。


アキの言った通り柚奈の姿を見つけた。


再びカーテンに隠れる。

「…ね?」


反応を求めて、顔を見つめた。


「うん、そうだね。」


「珍しいよね。朝っぱらから斉藤組に加わってるなんて。」


「うん。」


なにも言えなくて、短く応えた。


別に柚奈は誰とでも話すタイプだし、斉藤組の人達と話してること自体は、そこまで珍しくない。

だけどそれは、アキ達がいないときとかで。


好んで斉藤組に加わったりはあまりしなかったはずだ。


だから、斉藤さん達と楽しそうに笑う柚奈が、別人のように思えてならなかった。


「喧嘩でもしたの?」


心配そうに気遣う。


アキがそう思うのも、無理はなかった。


「してないよ。喧嘩なんて…。」


そういいながら、今日見た夢のことを思い出していた。