家に帰って、ベットにダイブ。


「お姉ちゃん?帰ってたんだ。」


ベットにダイブした音が響いたらしい。


開けっ放しの部屋のドアから、恵瑠が顔を覗かせた。


「ただいま~恵瑠。」


気の抜けた返事をする。

「制服のまま…。着替えなって。」


ベットに寝転がるだらしない姉の姿を見て、言った。


「あ。弟に言われちゃった。」


なんだか、上からな恵瑠。


大人気取りですか。


勢いをつけて起き上がり、スカートのファスナーに手をかけた。


「え、ここで着替えるの。」


「自分の部屋で着替えなくてどうするのさ。」


そういいながら、スカートを、ストンと落とす。

断っておくが、下にはハーフパンツを着用している。


なのにそれを知らなかった恵瑠は、一瞬慌てた様子を見せた。


変なの。


気にせずにキャミソール1枚になった。


「少しは気にしてよ。」

「なにが。」


「普通中学生の女の子が弟の前で脱ぐ?」

あきれ気味。


なんだ、もうそんな年頃のわけ。


「…恵瑠、可笑しい。」

思わず吹き出した私に、眉をひそめる。


「だから、少しは気にしてって…」


姉の着替えに照れるなんて、可愛いヤツ。


弟の言葉を聞き流しながら、キャミソールをめくりあげるため、手をかけた。


それに、気づいて


「あ~もう!!」


乱暴にドアを閉めて、自分の部屋に逃げ帰った。

「…なんだったんだ。」

何故かツボにハマって一人でクスクス笑っていた。




それから…


夜11時をまわっても、柚奈から連絡が来ることはなかった。


「上手くやったのかな…。」


ベットに寝転がり、天井を見つめて呟く。


まさか、今日は言えなかったのかな。


それとも…フラれたから報告してこれないの?


あり得ないとは思うけど、上手くいきすぎて大人の階段登っちゃった、とか。


あり得ないか。


事後報告してって、約束したのに。


塾が終るのが10時。


もうそれから1時間経ってる。


まだ家に帰ってないだけなの?


そんなことを考えながら、私は眠りについた。





放課後の教室。


そこに、私と柚奈はいた。


それが、ついこの間の、告白練習をしたあの日みたいで。


やけに、懐かしく感じた。


なのに、柚奈は泣いている。


私は焦って、色々声をかけるけど。


柚奈は、泣き続けたまま。


なにも、反応してくれない。


そっか。


柚奈はフラれたんだ。


だから泣いてるんだね。

柚奈に手を伸ばすと、


「ごめんなさい。」


小さく呟いて、


気づけば私は、教室の窓から落ちていた。


血は出なかった。


しかし腰に強い傷み。


細い針で数ヶ所刺されたような。


3階の窓から落ちた痛みには似つかわしくなかった。





現実の腰の痛みに目をさます。


寝違えたらしい。


それに加え、嫌な夢を見たせいで寝た気がしなかった。


胸が凍りつくような、悲しい夢。


多分私は、柚奈に突き落とされた。


夢を見ていた時は、気付かなかったけど。


目を擦りながら、メールが来ていないか、確認する。


着信は0件。


夢のことだけど…柚奈は本当にフラれてしまったのだと思った。