……私、何しに来たんだっけ
ふっと本棚のほうに目をやる。
興味をそそられるタイトルがいくつもならんでいた。
どの背表紙も度合いは違うが、うす汚れて色あせていた。
「なんか、いいね。こういうの」
友紀ちゃんに聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟いた。
「え?なに?」
「なんでもないよ。」
柚奈だったら、私の小さな呟きも聞き逃さずに“そうだね”って同意してくれる。
柚奈は、いまごろ誰といるのだろうか。
友紀ちゃんを見ながら、親友のことを想った。
友紀ちゃんといるのも楽しいけど、やっぱり私が一番居心地が良いのは柚奈の隣だ。
「そういえばさ」
すっかり集中力が切れてしまった友紀ちゃんが、小さな声で話しかける。
ちょうどそこで離れた席で勉強していた高校生が帰り支度を始めた。
Γ人形劇の台本、まだ決まってなくて。どうしようかなって。」
先ほどより少し大きめの声でそう言った。
高校生が図書室から出て行く。
Γう~ん。こないだはオリジナルのシナリオがいいなんて言ったけど。」
「ああ、友紀の話聞いてなかったときね。」
「う……。べ、別にオリジナル台本にこだわる必要はないんじゃないかな。」
「あれ、友紀の台本全部だめだった?」
かわいらしく首を傾げる。
「いや、ひまわりと山田とか結構好きだよ。」
ネーミングセンスが。
Γでも既成の絵本を題材にしてもいいんじゃないかなって思って。」
周りを見やると本棚にはまばらに絵本が入っている。
そこから三冊とり出して、長テーブルの上に置く。
「感謝を伝えるならこれかな。」
「あ、これ知ってる!木と男の子の話だよね?でも先輩に向ける感謝にしては重くないかな?」
「じゃあ、こっちは?」
「それもな~。ごめん、ピンとこない。」
「じゃあ……これなんてどうかな?だめ?」
意外と友紀ちゃんが絵本に詳しくて少し驚いた。
考えてみれば、自分でいくつも台本を書けるのだから、並の読書量ではないのだろう。
「“おおきなかぶ”?これは……先輩達とどう関係が?」
「こんなのはどう?みんなで協力してなにか……そう、卒業制作を作り上げることができました、って言うのを最後に付け足すの。それでね……?」
周りに誰も居ないのに、友紀ちゃんにそっと耳打ちした。
「……それ面白い!でも、センセに怒られないかな?」
「大丈夫でしょ!」
自分の案が通ってテンションが上がる。
素直に、嬉しい。
すると友紀ちゃんがなにかひらめいたみたいに、“あっ!”と声を上げた。
「じゃあこんなのどうかな!?先輩達にも、カブをひっぱるときのセリフを言ってもらうの!」
興奮気味にそう言った。
「面白い!」
「でしょ?」
「でもそれ美術部のノリじゃないよね。演劇部とかだったらやってくれそうだけど。」
「確かに、3年の先輩達、おとなしい人が多いもんね。部長は別だけど」
部長だったらやってくれそうだなー。
でも千尋先輩にはやってほしくないかも。
そんなことをぼんやり考えていたら、友紀ちゃんが急に立ち上がった。
ふっと本棚のほうに目をやる。
興味をそそられるタイトルがいくつもならんでいた。
どの背表紙も度合いは違うが、うす汚れて色あせていた。
「なんか、いいね。こういうの」
友紀ちゃんに聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟いた。
「え?なに?」
「なんでもないよ。」
柚奈だったら、私の小さな呟きも聞き逃さずに“そうだね”って同意してくれる。
柚奈は、いまごろ誰といるのだろうか。
友紀ちゃんを見ながら、親友のことを想った。
友紀ちゃんといるのも楽しいけど、やっぱり私が一番居心地が良いのは柚奈の隣だ。
「そういえばさ」
すっかり集中力が切れてしまった友紀ちゃんが、小さな声で話しかける。
ちょうどそこで離れた席で勉強していた高校生が帰り支度を始めた。
Γ人形劇の台本、まだ決まってなくて。どうしようかなって。」
先ほどより少し大きめの声でそう言った。
高校生が図書室から出て行く。
Γう~ん。こないだはオリジナルのシナリオがいいなんて言ったけど。」
「ああ、友紀の話聞いてなかったときね。」
「う……。べ、別にオリジナル台本にこだわる必要はないんじゃないかな。」
「あれ、友紀の台本全部だめだった?」
かわいらしく首を傾げる。
「いや、ひまわりと山田とか結構好きだよ。」
ネーミングセンスが。
Γでも既成の絵本を題材にしてもいいんじゃないかなって思って。」
周りを見やると本棚にはまばらに絵本が入っている。
そこから三冊とり出して、長テーブルの上に置く。
「感謝を伝えるならこれかな。」
「あ、これ知ってる!木と男の子の話だよね?でも先輩に向ける感謝にしては重くないかな?」
「じゃあ、こっちは?」
「それもな~。ごめん、ピンとこない。」
「じゃあ……これなんてどうかな?だめ?」
意外と友紀ちゃんが絵本に詳しくて少し驚いた。
考えてみれば、自分でいくつも台本を書けるのだから、並の読書量ではないのだろう。
「“おおきなかぶ”?これは……先輩達とどう関係が?」
「こんなのはどう?みんなで協力してなにか……そう、卒業制作を作り上げることができました、って言うのを最後に付け足すの。それでね……?」
周りに誰も居ないのに、友紀ちゃんにそっと耳打ちした。
「……それ面白い!でも、センセに怒られないかな?」
「大丈夫でしょ!」
自分の案が通ってテンションが上がる。
素直に、嬉しい。
すると友紀ちゃんがなにかひらめいたみたいに、“あっ!”と声を上げた。
「じゃあこんなのどうかな!?先輩達にも、カブをひっぱるときのセリフを言ってもらうの!」
興奮気味にそう言った。
「面白い!」
「でしょ?」
「でもそれ美術部のノリじゃないよね。演劇部とかだったらやってくれそうだけど。」
「確かに、3年の先輩達、おとなしい人が多いもんね。部長は別だけど」
部長だったらやってくれそうだなー。
でも千尋先輩にはやってほしくないかも。
そんなことをぼんやり考えていたら、友紀ちゃんが急に立ち上がった。



