暑い。


暑い。


暑い。


照りつける太陽のもと、私は友紀ちゃんを待っていた。


地域の公民館の前。


日陰になっている自転車置き場にいても、屋根の隙間からギラギラした太陽が覗く。


待ち合わせは1時半。


今の時刻は1時半。


昨日自分から誘ったくせに……まさか忘れてるのかな。


落ち着きなくうろうろ歩きながら、まっすぐ続く道の先に友紀ちゃんの影を探す。


それから数分。


自転車にまたがった友紀ちゃんがやって来た。


手は振らない。


振りかえされたら困る。


片手運転は危ないからね。


「ごめん、待った?」


「別に。私もさっき来たところだから」


「そっか。ならよかったー」


ジーンズの超ショートパンツ。


肩が見えるタイプのなんか特殊な服を着ていて、おもわずじっくりと見てしまった。


やっぱり私、地味なのかな。


「それにしても、こんなところに図書室なんてあるんだね」


受付に声をかけた私に、友紀ちゃんが言った。


なんでいちいち図書室を借りるのに受付に声をかけるのかも訊かれたけど、適当に答えた。


だって、入口にそう書いてあるから。


いちいち声をかけなきゃいけないのはちょっと面倒だけど、ここは学生が勉強するにはもってこいの場所だ。


県立図書館は“学生の勉強禁止”なんていう張り紙がいくつもしてあるし、家ではいまいち集中できないし。


ファミレスなんかは店員さんの目が怖い。


それにここは冷暖房も完備だし。


公民館の図書室に勉強しに来たのは今回が初めてじゃない。


冬休みにも、何度か柚奈と来たことがある。


今日は先客いるかな…?


図書室前の靴箱を覗いて確かめる。


ラッキー!


今日はいない。


よく近所の高校生が勉強しに来てるけど今日はいなかった。


小さな図書室には、長いテーブルが一つ。


向き合う形でイスが並べられている。


窓側の席に、横に並ぶ形で座った。


「じゃあ……なにやる?」

適当に夏休みの課題をテーブルの上に広げて、友紀ちゃんに訊いてみた。

「数学!問題集全然手付けてなくてさ」


パラパラっとめくって見せてくれた友紀ちゃんの問題集は、本当に真っ白。


「この二週間なにやってたの?」


「えー?わかんない」


無邪気な笑顔を向ける。

“だから赤点とるんだよ”


とは言わなかった。


私もそこまで充実した夏休みを送っているわけじゃないしね。


「ねぇ一瑠、ここわかんない」


やりだした直後、問題集をこちらによこし問題を指差す。


私達の他にはだれもいないけど、ちょっと落とした声で説明をした。


「こんなの習ったっけ?」

説明に納得してくれてから30秒後。


次の問題の説明を求めてきた。


そして次も、その次も。

意外と飲み込みは悪くないみたいだけど……。


結局、1時間後に高校生がやってくるまで、ずっとその調子だった。