「絶対音感のせいであたしのピアノは狂い始めたの。よーく聴いてると音が微妙にずれだした…同じく絶対音感を持ってるお母さんにもわからないくらいのズレ…」


涙を隠すのに必死だった…


「専門の先生に聞いたらあたしの絶対音感は格別にいいって知った…それで音がズレてるってわかるんだって言われた。コンクールへ出てもわからないくらいのズレだから大丈夫って言われ続けたけど、あたしはつらかった…けど、お母さんやピアノ教室の先生の期待があったから弾くしかなかった…ッ…」



涙をこらえるのが限界だった…



「沙羅…思い出したくないなら無理して話さなくてもいい。俺は今日、今じゃなくてもいいよ。」



和也はあたしに近づいて言ってくれた。


あたしの前にしゃがみこみ、下を向いているあたしを覗きこんだ




とても優しい顔で…