そこから休憩を適宜挟みながら二時間の基礎練習が行われた。

新谷二中の生徒はどうにかついていっている状態であったが、初めての練習試合でアドレナリンが分泌されているのだろう、誰一人として弱音を吐くものはなかった。

そして団体戦が幕を開ける。

両陣営が集合して話をしている。

中心にいるのは翔太と八尾である。

八尾は淡々と団体戦のメンバーを発表していく。

「第1ペア斉藤・中原。第2ペア吉田・近藤。第3ペア松戸・小池。

第4ペアは片桐が休みの為即席になるが佐藤と鮫島」

「はい!!」

どのペアも地区大会で表彰台に登るであろう実力者ばかり。

その中でもやはり練習の時点で異彩を放っていたのは、前回の新人戦優勝の片桐・佐藤組の前衛、佐藤太一であった。

「監督、あいつは試合には出ないんですね」

「なんだ知っていたか佐藤」

「あいつと戦える日が来るの楽しみにしてアンダーカット対策までしてたのになぁ」

太一は寂しそうに翔太の方を見つめていた。

八尾は腕組みをしながら言う。

「アンダーカット対策は無駄ではない。それに、なかなかの粒ぞろいだぞ。

特にあの長身の子は良い動きをしていたぞ」

「良い動き」その表現が八尾が決してお世辞などで出す言葉でないことを太一は知っていた。

悲しげな瞳が強く輝きを取り戻し、幸助が新たにロックオンされる。

「さて、お前らに助言はない。力の差をしっかりと思い知らせてやれ」

「はいっ!!」

幸大附の準備は整った。

メンバー入りした部員はジャージを脱いでユニホーム姿になる。

それを横目に見ながら翔太はしっかりとした声でメンバー発表に入っていた。

「まずは二週間の成果を自覚して欲しい。

君たちは僕の至らない指導の中でしっかりとついてきてくれた。だから最後に僕からはアドバイスではなく、この言葉を贈る」

部員の視線が集まる。

翔太は全員の目を見て言うのだった。

「君たちは強い!」

震えた。

鼓舞されるということはこういうことなのだと自分の身体が初めて知る。

その心地よさも。

「まずは先制して流れを掴みたい、第1ペアは幸助・匠先輩。頼みます」

「おうよ」

「荷が重いなぁ」

幸助と匠が拳を合わせる。

「第2ペア、とにかく動いて翻弄!真平先輩・快太」

「マジでオレこいつと組むのか」

「うおっしゃあ!試合だあ!」

「うるせぇな!足引っ張んなよ!!」

ペアとしての完成度は最悪に近い。

しかしそれをカバーできるだけの運動能力を秘めている二人であった。

「第3ペアはマッキー・勇気くん。第4ペアは篤人くん、歩夢くん」

「う、うん」


「頑張りましょうかね」

両陣営が向かい合って並ぶ。

「さぁ新生新谷二中いってこい!」

「おおおっ!」