「莉乃ってば、友達と喧嘩でもしたの?だから玄関先でワーワー泣いてたんでしょ?」

やっぱりいたんだ。

壁一枚隔てた場所に、三浦君は立っていたんだ。

そして、あたしに電話をかけてきた。

一歩鍵をかけるのが遅かったら……

もしもお母さんが帰ってこなかったとしたら……

一体どうするつもりだったんだろう。

全身に鳥肌が立ち、寒気がする。

「玄関から出てきたのって……どういう人だった?」

「どういうって言われると難しいわ。お母さんが見たのは後ろ姿だし」

「ねぇ、それって男の子?女の子?」

「変なこと聞くわね。莉乃の友達でしょ?」

「いいから。お願い!!早く教えて!」

鬼気迫った様子のあたしにお母さんは渋々答えた。

「背の高い男の子。ねぇ、彼って莉乃の彼氏なの?」

ニヤケ顔でそう尋ねるお母さんの顔がぐにゃりと歪む。