「それで、どうして玄関先に座り込んで泣いてたのよ」

ソファに座るあたしにホットココアを差し出して不思議そうに尋ねるお母さん。

あたしはいまだに震えの収まらない右手でココアを受け取った。

「チャイムを連続で鳴らされて……玄関の扉を叩かれて……すごく怖かったの。誰かが家に入ってくるような気がして……」

三浦君のことを全てお母さんに話すのはためらわれた。

赤い封筒はお母さんがココアを用意してくれている間にこっそり隠した。

散らばっていた爪は何重にも重ねたティッシュで拾い集めて封筒に戻しておいた。

親に同級生にストーカーされていると話せば、大事になってしまうかもしれない。

それに、もう家まで知られている。

騒ぎ立てて相手を刺激でもすれば、これ以上のことをしてこないとも限らない。

あたしがにごしながらも今起こった現実を口にすると、お母さんはふふっと笑った。