トントンッと軽快に階段を下りていた時、パッと目の前に人が現れた。

「えっ!」

驚いて目を見開く。

う、嘘でしょ……?

気付いた時には時すでに遅し。

階段を登ってきた人の肩付近にあたしの体は派手にぶつかり、弾かれた体はその拍子で大きくバランスを崩す。

ぐらりと揺れる視界。背中から倒れそうになり反射的にギュッと目をつぶり体に力を込めると、ガシャンっという何かが割れたような音がした。

とその瞬間、強い力で腕を掴まれて体を引っ張られた。

あまりに一瞬の出来事に頭がついていかない。


「おい、大丈夫か?」

低くてかすれた声に恐る恐る目を開けると、そこには隣のクラスの派手な男の子がいた。


彼はあたしの腕を引っ張り、斜めになった体を起き上がらせると心配そうに顔を覗き込んだ。