「急がなきゃ」

一階の職員室に向かう足が自然と速まる。

ピョンピョンッと階段を一段飛ばしで下りているとき、ふと桜と好未の顔が頭に浮かんだ。


桜とは中3からの付き合いだ。


中学時代から成績優秀で、学年順位はいつも1位。


人の上に立ち、物おじせずにハキハキと発言できる桜。


人前に立つと、顔が真っ赤になり声が小さくなってしまうあたしにとって桜は尊敬に値する。

『桜はすごいね。なんでもできるんだもん。あたしは平凡で取柄もないし、ホント羨ましい』

桜はあたしの言葉に首を横に振った。


『まさか!莉乃に取柄がないわけないじゃない。例えば、誰に対しても平等に優しいところでしょ。あとすごく素直。それからーー』

指を一本ずつ折って数えながら桜はあたしの良いところをあげてくれた。

『気遣いができるところ、人の気持ちを考えてあげられるところ、人を疑わないところ』

桜はいつだって優しい。なんだかあたしはいつも桜の優しさに甘えてばかりな気がする。


今までも何か悩みがあると真っ先に桜に相談してきた。

しかも、桜に相談するとその悩みはなぜかすぐに解決した。

頭の回転の速い桜はいつも的確なアドバイスをくれる。

『何か困ったことがあったらすぐにあたしに言いなさいよ?』

桜は決まっていつもこう言う。

いつだってあたしはその言葉に甘えてばかりだ。

桜はあたしの大親友であり、良き理解者だった。

心の底から桜のことを信じられる。

こんな親友に出会えたあたしは本当に幸せ者だ。